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歯の噛み合わせ

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2020年01月14日

胃切除症候群と噛み合わせ

胃を切除する事は胃の機能を失う事です。
胃は食べ物を一時的にためておいたりタンパク質や脂肪分解、消化、吸収の役割をします。
胃の噴門部を切除すると食べ物が食道に逆流しやすくなり、逆流性食道炎になりやすいのです。
また、食べ物をためておく機能も失われ、小腸に一度に流れる為に「ダンピング症候群」を起こします。
早期ダンピング症候群の症状は、食後5分~30分に冷や汗、動悸、めまい、しびれ、だるさ等を訴え、全身症状は、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、腹部膨満などの腹部症状を起こします。
食後2~3時間で頭痛、倦怠感、発汗、めまい、脈・呼吸が早くなります。
原因は食べ物が胃内にためられることなく短時間で小腸に流れ込む為に起こります。
対処法は、高タンパク質、低脂肪、低炭水化物の食事に気を付け、一度にたくさん食べず、少しずつ回数を多くして、よく噛み、唾液と混ぜ合わせて口の中でお粥状態にしてから飲み込む事です。
噴門部を切除すると、食べ物や腸液が食道に逆流して、逆流性食道炎が起こり、強い胸やけが起こりやすいのです。

●早期ダンピング症候群 対処法
無理をせず横になって休む事です。
食べ物が急激に運ばれ、腸の動き(蠕動運動)が激しくなり、腸から血管に作用する物質が分泌されて全身の血管に広がる為に、冷や汗やめまいの症状があらわれます。

●晩期ダンピング症候群 対処法
炭水化物が小腸に急速に流れ込み、炭水化物に含まれる糖質が急激に血液の中に吸収されて、一時的に高血糖になり、糖を処理するインスリンと糖吸収が終わっても分泌され、そのため低血糖になるので糖分を補給する事です。

●早期晩期のダンピング症候群の予防するために
食事はゆっくり、よく噛んで食べ、腹八分目にします。
症状が起きそうだと感じたらすぐに飴をなめることが予防に繋がります。

Ⅰ.胃切除術後に起こる症状
①「下痢」
胃切除後1~2カ月で起こりやすく、約10%にみられる。
食物が一度に小腸に流れ込む事で神経反射が起こったり、腸の蠕動運動が過激になって起こります。
タンパク質や脂肪の吸収が低下し、便は少し軟らかめで、90%くらい下痢や便秘がみられます。
胃腸の手術後には、腸閉鎖(イレウス)が起こりやすく、3日くらい便秘が続いたら気を付ける事です。

②「げっぷ、おなら」
げっぷは胃が小さくなったことによるもので、おならは食事や会話時、無意識に空気を飲み込むことによって起こります。

③「貧血」
胃切除後30%胃全摘70%みられるものです。
鉄分の吸収力低下、ビタミンB12吸収力低下によるものです。

④「栄養障害」
白っぽい便「脂肪便」が出て、身体のタンパク質が減ってむくみ(低タンパク血症)体重減少、貧血など栄養不足の症状がみられます。

⑤牛乳不耐症(乳糖不耐症)
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり、腹痛や下痢は10~15%みられます。
原因はタンパク質の分解、吸収力低下、腸内細菌のバランスが崩れることが原因です。

⑥逆流性食道炎
噴門部を失ったことにより、食べものが逆流しやすくなります。
予防はすぐに横にならない事で、夕食は就寝約3時間前までにすませる事です。

⑦逆流性胃炎
胆汁などの消化液が胃に逆流する事で起こり、胃酸が減っ為に胃内の細菌が増殖する事が原因です。

Ⅱ.術後何年経ってから起こる症状
①胃切除後胆石
手術時、胆嚢の神経が切れると、胆嚢の動きが悪くなり、結石が出来やすくなります。
それはリンパ節を広範囲に郭清した時10~20%にみられます。
手術後、3年以内に起こることが多く、予防として手術で胆嚢をとることもあります。

②カルシウム吸収障害(骨粗しょう症)
骨密度の低下で、骨がもろくなり、小さい外力でも骨折しやすくなります。
予防法は、食事療法、運動療法です。


Ⅲ.手術後の予防法
少しずつ良く咬んで食べ物を撹拌してお粥状にして、「口で胃の働きを補う」すなわち「口に胃の代わりをさせる」事で、食べ物を少しずつ小腸に送ります。
それは唾液にはでんぷんを分解するアミラーゼという消化酸素が含まれているので、食べ物を少しずつ良く咬むことで、唾液の出が良くなり、食べ物をよく混ぜ合わせ粥状にすることで、残った胃や腸の負担を軽減するのです。
少しずつしか食べられない為に水分の摂取量も少なくなりがちです。

食事でつまずくのは、一度にたくさん食べる事と、食後すぐ横になる事で、食後15分~20分休んだら、散歩に出かけるなど、軽い運動をすることで胃や腸がよく動くのです。

食べることが苦痛になってしまうことはつらい事で、残された消化器をいたわる食べ方を心がけると同時に、食べる楽しみを徐々に取り戻しましょう。

まさに唾液は自然がくれた特効薬なのです。

咬合治療は、自律神経を調整し副交感神経に優位に働き、唾液を増やす事と良い姿勢を導くことは胃のピンチヒッターになりうる可能性もあるのです。

投稿者:池上 孝