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2020年05月01日

フレイルにおける認知症予防とケアーについて

認知症とは、何らかの病気によって脳の神経細胞が傷つき死滅するために「記憶障害」などの症状が現れて日常生活に支障をきたす状態の事です。
物忘れは加齢でも増えますが、加齢による物忘れと、認知症による記憶障害とは異なります。
加齢による物忘れは、「食事をしたことは覚えていますが、何を食べたかを思い出せない」というように、体験したことの一部を忘れますが、時間や場所などはわかり、日常生活には支障はありません。
一方認知症による記憶障害は、新しい記憶がすっぽり抜け落ち、体験した事そのものを忘れてしまいます。
例えば、食事をしたことを覚えておらず、忘れているという自覚もありません。
最近の出来事を忘れてしまう為、同じことを周囲の人に何度も繰り返し聞いてしまうなど、日常生活に支障をきたします。
アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つのタイプがあります。

「アルツハイマー型認知症」について
アミロイドβという一種のタンパク質が、脳の神経細胞の外側に蓄積すると「老人斑」という“シミ”のようなものができます。
脳にアミロイドβが溜まると「リン酸化タウ」というゴミのような物質が神経細胞の中に蓄積して、神経細胞が死滅し脳が委縮してアルツハイマー型認知症が発症します。
症状が現れる20年以上前からアミロイドβは蓄積を始めると言われています。

(予防法)
適切な睡眠をとる事で、脳からアミロイドβが除去され、リン酸化タウが溜まりにくくなると考えられています。
1日の睡眠時間が7時間の場合と比べて、6時間以下では発症リスクが1.36倍に、また8時間以上の場合は1.27倍になる事が報告されています。
そこで1日7時間を目安に睡眠をとり、規則正しい生活を心がけるのも予防法のひとつです。
また糖尿病の人は、ない人に比べてアルツハイマー型認知症の発症率が約2倍高い事が報告されています。
糖尿病の人の血糖値のコントロールは膵臓から分泌される血糖値を下げる働きをする「インスリン」というホルモンが重要な役割を果たしています。
インスリンは血糖値を下げる働きと脳のアミロイドβを分解する役割を担っています。
血糖値が高いとそれを下げる為にインスリンの分泌が増えすぎアミロイドβの分解ができにくくなり神経細胞の死滅に繋がってしまいます。
最近では糖尿病患者の特有の「糖尿病性認知症」という考え方もあるそうです。
糖尿病に罹患している期間が長かったりコントロールが悪い時に起こり、記憶障害より「注意機能遂行機能障害」が目立つと言われています。
普段から脳を良く使い生きがいを持ち、活動的に生活している人は脳の萎縮が起こっていても症状が軽かったり、認知症を発症していないケースもあるようです。
人が人生のうち使う脳の機能は一部で残りの大部分の機能は使われず眠ったままの状態です。
神経細胞が死滅して脳が委縮し、一部の機能が失われても使われていない残った脳の機能が活性化すれば、認知症の機能の低下を補うことが出来ると考えられています。
これを「認知機能予備能」といい、使われていない脳を活性化する為にも生活の中で積極的に身体を動かしたり、人と良く話したり、長く続けられる趣味があると、脳をよく使うことと同時に生きがいも感じやすくなります。
楽しんで出来る事ならどんな活動や趣味も認知症を防ぐ最高方法になるのです。

(認知症ケア)
「ユマニチュード」とは大切に思う気持ちを相手に届ける事です。
ケアを受ける人にうまく伝える為の方法のひとつにユマニチュードがあります。
「あなたの事を大切に思っています」というメッセージを伝える為に「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの柱があります。
●見る
正面から視野の中心に入るように近づき、視線を同じ高さにして笑顔で相手を見つめる
●話す
いつもの3倍多く話し、ケアの動作を言葉にして伝える。
●触れる
下から広い面積でしっかりと掴むのではなく支える。
●立つ
1日に合計20分立つ事ができれば寝たきりを防ぐ事に繋がると言われています。
立っている事で骨に重みがかかり、骨粗鬆症を予防する効果があり、筋力の低下、誤嚥の予防、むくみの改善にも繋がります。
また何かにつかまってでも立つ事は本人の自信にもつながります。
ケアする人は相手に何でもしてあげるのではなく、相手が持っている「立つ力」を保つために手伝うことです。

NHKきょうの健康(2020.4)より

投稿者:池上 孝